法律を論理式で書く?

「法律の条文の本文は,論理式で書かれなければならない(前文は自然言語.条文は人工言語)」というルールを提唱している人がいる。このルールを採用すると大きな害がある。
人工言語を用いて法律を書く場合、その人工言語の規格を、あらかじめ定める必要がある。さらに、法律を書くのに使う用語の集合は言語学的に開いているから、どんなに完璧な人工言語を作ったつもりになっても、いずれ拡張しなくてはならない。
人工言語を定義し、拡張するためには自然言語を用いなくてはならない。そうしなければ、現実世界との対応を付けることができないからだ。
条文は人工言語で書くから解釈に揺れが無いようにすることはできるだろうが、人工言語の定義は自然言語で書くから、解釈の揺れを消すのは、自然言語による条文の解釈の揺れを無くすのと同程度に難しい。
さらに、上記のルールを採用した場合には、人工言語の定義を読んで理解できる人だけしか、法律を読むことはできなくなる。さらに、法廷での論争は、人工言語の定義をどう解釈するのかという問題に集中するから、人工言語の枠組みを理解できる人だけしか、法廷で議論はできないことになる。