『シルトの岸辺』的な予感
『シルトの岸辺』という小説は、ほとんど忘れてしまったが、こんな話だった気がする。
老いた共和国がある。まるで熱力学的な平衡に達しているかのように、状況はまったく変化しない。もちろんそれなりの活動はあるのだが、本当に新しいことは起こらない。
さて、この国には海岸がある。海岸には要塞がある。海の向こうには別の国があるらしい。別の国があって、戦争状態にあるらしい。らしいのだが、もう、ずーっと、向こうがこちらに姿を見せないので、ほんとうに戦争状態にあるのか、疑わしい気分になっている。当然、わざわざこちらから出かけていったりはしない。暇な要塞。
そんなふうに成熟しきった退屈な世界が、崩れていくお話。
なんか、ぴらぴらには嫌〜な予感がするのである。
悪いことが起きる予感、ではない。
人生の上で重要な出来事が、やってくるような気配がする。
本当に上手に御していけば、宝を得るかも知れない。
しかし、足を滑らすと、とんでもないことになるかもしれない。