ちゃり旅

人に物を渡しに、自転車で東府中に行ってきた。わざわざ自転車で行かなくても中間地点で待ち合わせて渡す物だけ渡してしまえばすんだのだが、ちょっと見たいところがあった。

例のごとく、今日のルートもこれから地図帳に書きこむつもり。

家を出るときに、後輪の空気が抜けているのに気づいたが、そのまま出発した。三鷹から自転車でしばらく行くと、東八道路というのに出た。ここを自転車で走るのは初めてだ。なぜか風が強くて、しかも向かい風なので難儀した。道端に無料の自転車タイヤ空気入れ機があって助かった。

曇っているのでいまいち方角がよくわからない。地図も重いので持ちありいていない。しかしなんとなく進む。東八道路に飽きたので左折してうろうろしていると、もう畑と住宅の混じった「耳をすませば」の世界である。もちろん坂道もある。帰りはどうしようと心配しながらびゅーっとくだる。

国立天文台の森の北西に沿って、中学校の前を通ると、石畳の遊歩道に出た。ぽつぽつと雨が降ってきたが、雨雲よりも自分の方が早く動いているということにして、進む。遊歩道の終わりに、急な階段。出た、国分寺崖線多摩川河岸段丘にできた崖である。この崖の下は湧水がところどころに湧き、昔から「はけ」と呼びならわされてきたらしい。

雨が降ってきたのでちょっと急いで野川を渡る。野川は、このあたりでは国分寺崖線に沿っている。はけからの涌き水を集めて流れている。進むと、中央道をくぐって、甲州街道に出た。目指す東府中の駅がある京王線も近くに通っているはず。ちょっとさぐると、西調布の駅をみつけた。

京王線には不案内なぴらぴらは、西調布と東府中の間に駅がいくつあるのか知らなかった。雨が少し強くなってきたから西調布の線路の下で雨宿りしようかと思ったが、もう少しで着きそうだからといって出発してしまった。

西調布の駅を出てしばらくして、急に雨風が強くなった。渡す物は紙であり、とある団体で歴史的に価値があるとされているものだ。濡らすわけにはいかない。さて困った。そこで目に入ったのが「旧しながわ道」の掲示。古い街道は、変に突き当たったりせずに、だいたい一方向に進むので都合がいい。これに沿って進むことにした。

しばらく行くと、コンビニの「ベルギーチョコソフト」が目にとまった。食べたいので食べた。

駅があるたびに線路に寄っていって、ここは東府中駅かそうでないかと確かめる。確かめてしながわ道に戻るとき、「この道を離れて駅を見てから戻ってくるまで、一瞬のことといえば一瞬のことのように思える。時間が流れているのは現在だけであり、過去には時間が流れていないからに違いない」などととりとめのないことを考えた。だいぶ疲れている。

しながわ道は、ところどころくねった細い道だが、いまでも歩道がきちんと整備されていて、ずっと愛されてきた道なんだなぁと思う。そのしながわ道と京王線の線路が並んだところに東府中の駅があった。で、渡すものを渡した。

で、気になっていたのが、ぴらぴらの生まれた病院である。東府中にあるとは聞いていたが、どんなところだか知らないので見に行ってみた。建物は新しそうだった。いちおう一周してみた。すると、看板に出ている紋章が、うちにあったタオルに入っていた紋章と同じだったので、たぶんここだな、と思った。

雨がやみそうにないので、自転車を置いて、電車で帰った。